2025年最新 食品衛生法の要点を3分で理解する

食品衛生法とは何か

制定の背景と歴史

戦後の日本では、衛生状態の悪化や食材不足が重なり、大規模な食中毒が頻発していました。特に 1946 年の夏には細菌性食中毒が全国で 4 万件近く報告されるなど、社会的な不安が高まります。

そこで 1947 年、国は「食品衛生法」を制定し、全国一律の衛生ルールを初めて法的に整えました。
その後も冷蔵技術の進化、輸入食品の拡大、加工食品の多様化などに合わせて条文を改正しています。

直近の 2018 年改正(施行は 2021〜2025 年)では、HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた衛生管理の義務化や、リコール届出のオンライン化など、時代に即した大規模アップデートが行われています。

法律の目的

食品衛生法には、大きく分けて次の 3 つの狙いがあります。

  1. 健康被害を防ぐ:有害物質の混入、細菌やウイルスによる食中毒を未然に防ぎ、国民の生命・健康を守る。
  2. 食品の安全と品質を保つ:原材料の受け入れから製造・流通・提供まで、各工程に基準を設けてチェックし、一定レベル以上の品質を確保する。
  3. 信頼できる情報を届ける:アレルゲンや賞味期限などの表示ルール、広告の禁止事項を定め、誤表示や誇大表現によるトラブルを防止する。

誰に関係するの?

対象になる事業者

食べ物や飲み物を「製造・加工・調理・貯蔵・輸入・販売・提供」するほぼすべての事業者が対象です。食品工場、飲食店、惣菜店、スーパー、コンビニ、キッチンカー、食品ネット通販など、規模の大小や形態を問いません。

家庭との違い

家庭で作る料理に法的な義務はありませんが、手洗いや温度管理、交差汚染防止といった基本的な衛生の考え方は共通です。家庭でも知っておくことで、食中毒リスクをぐっと減らせます。

💡ひとことメモ

・食品衛生法は国内の “最低ライン”。海外輸出や大手との取引で国際規格(ISO 22000 や FSSC 22000)の取得を目指す場合も、まずこの法律をクリアしていることが前提になります。
・近年の改正で HACCP を取り入れた衛生管理 が義務化され、規模の小さなカフェや移動販売でも簡易版 HACCP の計画と記録が必要になりました。記録と言っても、温度チェックや手洗いチェックを紙やアプリで残す程度なので、早めに仕組みを作れば大きな負担にはなりません。

食品衛生法の重要ポイント

食品衛生法には “ここだけは必ず押さえたい” という4つの柱があります。まずは全体像を表でつかみ、そのあとに各ポイントを簡潔に解説します。

分野かんたんに言うと何が決まっている?根拠条文(例)
食品・添加物の規格基準口に入る成分の上限を決めるルール使用できる添加物・残留農薬の許容量など第11条・第13条
器具・容器包装の規格基準食品に触れる材料の“素材リスト”ポジティブリストで認められた樹脂・金属など第16条
表示・広告の規格基準ラベル表記と宣伝のルールアレルゲン・期限表示・誇大広告の禁止第19条・第32条
飲食店の営業に関する基準お店を開くための許可・届出新営業許可 34 区分/届出 28 区分第52〜55条

食品・添加物の規格基準
食品や飲料、添加物に含めてよい成分と量を細かく定めています。たとえば残留農薬の上限や、使用が認められる甘味料の種類など。
事業者のチェックポイント:原料仕入れ時に「規格適合証明書」を保存自社で新商品をつくる際は、使用予定の添加物がリストにあるか確認

器具・容器包装の規格基準(ポジティブリスト制度)
2025 年 6 月に完全施行。食品に触れるプラスチックや塗料などは、“あらかじめ認められた物質だけ” を使う方式に切り替わります。

事業者のチェックポイント:
・新しいパッケージ材を採用する前にリストを確認
・輸入品も対象になるため、サプライヤー証明書を入手して保管

表示・広告の規格基準
消費者に誤解を与えないため、アレルゲン・賞味期限・原材料などの表示方法が細かく定められています。また「○○だけでやせる」といった誇大広告も禁止されています

事業者のチェックポイント
・アレルゲン 8 品目+推奨 20 品目の表示を漏れなく記載
・ネット通販の商品ページも表示対象になる点に注意

飲食店の営業に関する基準
2021 年から営業許可区分が再編され、フードトラックやゴーストキッチンなど新業態も届出が必要になりました。

事業者のチェックポイント
・自店舗が「許可(審査あり)」か「届出(書類のみ)」かを区分表で確認
・施設基準(シンクの数・手洗器の設置など)を改装前にチェック

💡覚えておくべきこと

この4本柱が食品衛生法の“骨格”となる重要なポイントです。どの業態でも最低限ここを押さえれば、法令違反の大半は防げるはずです。
さらに細かな運用ルールは各自治体の条例や指導要領で補強されるため、店舗や工場がある地域の保健所ウェブサイトを定期的に確認すると安心でしょう。

最近ここが変わった(2021〜2025 年の主な改正)

まずは全体像をかんたんな時系列で記載しました。個別の改正ポイントは後に続きます。

施行時期改正項目概要現場でやること
2021 年6 月HACCP 義務化すべての事業者に“工程ごとに危害を把握し、記録・改善する”仕組みを導入させる。小規模事業者は簡易版で可。温度・手洗いなどのチェック表を作成し、毎日記録+保管(原則1年)。
同日営業許可・届出制度の再編従来50あった許可区分を34に整理し、届出28区分を新設。フードトラック、ゴーストキッチン、ネット通販も届出対象に。自社業態が「許可」か「届出」かを区分表で確認し、開業前にオンライン申請。
2022 年6 月寄生虫・天然毒素対策強化アニサキス、テトロドトキシン(フグ毒)などを想定した加熱・冷凍条件が明文化。−20 ℃で24時間凍結、中心75 ℃1分加熱など基準をレシピに書き込み、作業者教育を実施。
2023 年12 月広域調査権限の拡充食中毒や異物混入が複数県に及ぶ場合、厚労省が都道府県を越えて立入検査できるように。事故が起きたら24時間以内に保健所へ一次報告→取引先リストを即提出できる体制を整備。
2024 年6 月リコール届出システム(RMS)全国運用自主回収を行った際、10日以内にオンラインで詳細を報告することが義務化。FAX・郵送は原則廃止。厚労省「RMS」アカウントを取得し、担当者・代理者を登録。社内マニュアルに通報フローを追記。
2025 年6 月ポジティブリスト制度〈器具・容器包装〉完全施行食品に触れるプラスチックなどは“リスト掲載物質のみ使用可”。輸入品を含め全製品が対象。包材メーカーから物質リスト・証明書を取得し、ロットとひも付けて保管。新採用品は事前に適合確認。

2021 年施行 — “まず HACCP” がすべてのスタートライン
HACCP は元々、NASA が宇宙食の安全確保のために開発した手法です。
「危害要因を洗い出す → 重要管理点を決める → 記録する」の3ステップで衛生管理を“見える化”する点が特徴。
簡易版(小規模向け様式)はチェック項目が絞られており、日々の温度・清掃・手洗いを記録すれば最低要件を満たせます。
ワンポイント:紙でも Excel でも可。後で見返せるよう日付と署名(または打刻)を忘れないこと。

同日に刷新された営業許可・届出制度では「ネット販売だけ」の事業者も届出が義務。
施設審査が不要=届出と誤解されがちですが、届出漏れは許可漏れと同等の違反なので要注意です。

2024 年施行 — リコール報告はオンラインが標準に
自主回収届は従来、FAX や書面提出が主流でしたが、2024 年度からは厚労省のリコール情報報告システム(RMS)へのオンライン入力が義務化。
・各社1アカウントを取得し、担当者+代理者の2名体制で登録
・届出完了後はシステムが公開サイトへ自動連携 → 消費者・取引先への告知が迅速化

2025 年施行 — 包材リスクが新たな焦点
食品に触れるプラスチックは、溶出による健康リスクが国際的に議論されてきました。
日本でも “ポジティブリスト” 方式が導入され、リスト外物質を含む包材は販売不可に。
輸入製品も対象なので、原産国・物質名・用途を証明できる書類を調達しておくことが欠かせません。
・新包材を採用する場合 → 取引先から「適合証明書」「成分表」を取得
・既存在庫 → 2025 年 6 月までに売り切るか、適合品へ切替えが必要

実務担当者が最優先でやるべきこと(まとめ)

  1. HACCP 記録フォーマットを整備し、点検・サインを習慣化
  2. 営業許可/届出の区分を自社・全拠点で再確認
  3. RMS アカウントを取得し、社内リコール手順書をアップデート
  4. 包材・容器の物質リスト証明書を取引先に依頼し、保管フォルダを作成

こうして改正事項を時期ごとに潰していけば、行政対応で慌てるリスクは大幅に減ると思われます。

食品衛生法と HACCP・ISO・FSSC の関係

食品安全の規格は「法令(食品衛生法) → 衛生管理手法(HACCP) → 国際認証(ISO / FSSC)」という階層構造になっています。自社の立ち位置と目指すレベルをつかむために、まずは全体像を押さえましょう。

レイヤー位置づけ義務/任意キーワード主なねらい
食品衛生法国内法(最低基準)義務許可・届出、HACCP導入、表示、リコール届健康被害を防ぎ、消費者の信頼を守る
HACCP法に組み込まれた衛生管理手法義務(簡易版可)危害分析・重要管理点・記録工程ごとのリスクを見える化し、再発を防止
ISO 22000国際規格(マネジメントシステム)任意PDCA、経営層の責任、継続的改善“会社全体”で食品安全を回す枠組み
FSSC 22000ISO 22000を基盤にした認証スキーム任意ISO+前提条件プログラム(PRP)+追加要求取引先・国際小売が求める実践的レベル

食品衛生法 ― 国内で事業を営むための“土台”
許可・届出、表示、リコール届出など 守らなければ罰則があるルール。
2018年改正でHACCPの考え方が条文に組み込まれ、記録と改善サイクルが必須に。

    HACCP ― 法律が求める“具体的なやり方”
    食品衛生法を実務に落とし込む操作マニュアルの役割。危害分析→重要管理点→記録→改善の4ステップで、工程リスクをコントロール。
    小規模事業者は点検項目を絞った「簡易版HACCP」でよいが、記録保存は外せない。

    ISO 22000 ― 経営レベルでの食品安全マネジメント
    HACCP を軸に PDCA(計画・実行・確認・改善) を経営層まで広げる国際規格。海外輸出や多国籍企業との取引では「食品衛生法+ISO 22000」が事実上のパスポートとなる。
    認証取得には第三者審査が必要だが、内部監査の仕組みを先に作るとスムーズ。

    FSSC 22000 ― さらに一段高い実践レベル
    ISO 22000 の要求事項に加え、前提条件プログラム(PRP) と呼ばれる詳細な衛生基準、食品防御(フードディフェンス)、食品偽装対策などが追加。
    欧州小売(コルゲート、ユニリーバ等)や国内大手コンビニの一部は、サプライヤーに FSSC 認証を条件とするケースが増加。
    取得すると顧客監査が省略されることも多く、輸出・OEM 取引のコスト削減に直結する。

    食品衛生法を違反しやすいポイント

    食品衛生法を日常業務に落とし込む中で、つまずきやすい“抜け道”はおおむね決まっています。ここでは現場で頻発する 5 つのケースと、未然に防ぐコツをまとめました。

    よくある違反どうして起きる?防ぐコツ
    営業届出(許可)漏れネット販売やフードトラックなど、新業態が届出対象になったことを把握していない。開業前に「許可か届出か」を区分表で照合。変更・増設時にも再確認する。
    HACCP 記録の欠落忙しい時間帯に記録を後回し→失念。チェック表が複雑で入力しづらい。記録項目を最小限にし、作業ラインの壁に貼るorタブレット入力で“記録タイミングを見える化”。
    アレルゲン表示ミス新メニュー追加時にラベル更新を忘れる。仕入先の原材料変更を見落とす。レシピ変更時に「表示チェック」を必須ステップに。仕入先からの仕様変更連絡をメールだけでなく共有ファイルに転記。
    リコール届出の遅延回収判断に時間がかかり、オンライン届出(10 日以内)を過ぎてしまう。回収の判断権限と手順書を事前に明確化し、RMS システムにログインテストを実施しておく。
    器具・容器包装の規格外使用取引先が新素材に切り替えたが、ポジティブリスト適合証明をもらっていない。包材採用フローに「適合証明書の入手」を組み込み、文書がない場合は使用前に必ず確認を取る。

    これを見て分かる通り、行政処分の多くは「故意よりも手続き漏れ」です。許可更新・届出・記録保存といった“紙と期限”の管理を仕組み化するだけで、違反リスクは劇的に下がります。

    シンプルな対策 3 か条

    • チェックリストに“期日”と“担当名”を明記:例)リコール報告 →「発生から○日以内に RMS 提出/担当:品質保証部 ●●」
    • ファイル名の頭に日付+バージョン を付けて、最新手順書が一目で分かるようにする
    • 月 1 回の 15 分ミーティング で「法改正・仕入先変更・クレーム」の 3 点だけ共有し、次のアクションを即決。

    よくある質問(FAQ)

    Q1. 小さなカフェやテイクアウト専門店でも HACCP は義務ですか?

    A. はい。
    2021 年から “すべての食品事業者” に衛生管理の記録が求められています。
    ただし従業員 50 名未満など小規模事業者は「簡易 HACCP 様式」を使えば、点検項目を絞った運用で対応できます。

    Q2. 許可と届出の違いは何ですか

    A. 審査の有無が最大の違いです。

    区分施設審査手数料申請先
    許可あり(設備基準を確認)数万円程度保健所
    届出なし(書類提出のみ)無料e-Gov または保健所

    フードトラックやネット販売など、新業態は届出扱いになることが多いのでご注意ください。

    Q3. 自主回収(リコール)をしたら何日以内に報告が必要ですか?

    A. 原則 10 日以内です。
    厚生労働省のオンラインシステム「RMS」にログインして、品名・理由・回収量などを入力します。紙や FAX での報告は 2024 年から廃止されています。

    Q4. ポジティブリスト制度って一言でいうと?

    A. 「食品に触れる素材の“使用 OK リスト”」です。
    2025 年 6 月から、容器包装・調理器具はリスト掲載物質のみ使用可能。輸入品も対象なので、包材メーカーから適合証明書を取り寄せ、ロットと合わせて保存してください。

    Q5. 違反するとどんな罰則がありますか?

    • 行政処分:営業停止・営業禁止
    • 刑事罰:最大 3 年以下の懲役または 300 万円以下の罰金
    • 回収コスト:製品廃棄・広告費・ブランド失墜など二次損失も大きい

    まずは届出漏れや記録欠落といった “うっかり違反” を防ぐ仕組みづくりが重要です。

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